小説

ひかりです。

即興小説トレーニングというサイトがあるのですが、制限時間(15分、30分、1時間、2時間、4時間、ランダムまで選べる。)を選んで、必須要素(なし、あり、ランダムから選べる。)を選択して、スタートすると、上に、お題と、必須要素が表示され、それに沿った小説を時間内に書くというものです。

そういえば、前に、即興小説トレーニングで書いたのを、ワープロソフトに移していたのがあったなーと思い、読んでみると、そんなに悪くないなと思ったのです。

即興小説トレーニングで書いたのとは、ラストが違うので、多分後で書き直したようです。

元の原稿が酷いので、それは読み返してないですけどね。

ちなみに、前回書いたのはこちら。

arutenaira.hatenablog.com

 

↓こんなお題と、必須要素で書きました。必須要素がある方が書きやすいです。

お題:興奮した高給取り 必須要素:パチンコ玉
「パチンコと生き神(仮)」

 

家の近所に、煙草が吸えないパチンコ屋があって、僕の母は家事が落ち着いた午後に、いつも出かけては、何か景品をもらって帰ってくる。
父は医者で、自分でも母にいろいろ迷惑を今まで掛けていた事を分かっていたから、母のパチンコ通いには、特に何も言わない。
それどころか、母が高額の景品をもらって帰ってきた時には、最近のパチンコはすごいなと感心しているほどだ。
僕はなんとかパチンコ屋に行ける年齢になり、母が何であんなにハマっているのか、理由が知りたくなった。
大学の休み、家にいた僕は、昼過ぎに、パチンコ屋に出かけようとした母を呼び止めた。
「母さん、パチンコ行くの?」
「うん、そうだけど」
少し、きょとんとした顔をこちらに向けて、母は答える。
「僕も一緒に行っていい?」
「いいけど。どうしたの?」
「いや、興味があって」
「いいよ。行こう」
家を出て、大きな道に出る。
歩道を二人で歩いたりするのは、どれだけ前の事になるだろう。
「俊哉さ、お母さんがパチンコ始めた理由わかる?」
「そりゃあ、父さんに対する当てつけだろ」
すると、母は苦笑いをして、眉間に皺を寄せた。
「違うよー。お父さんね、あれでも、昔結構パチンコやってたんだよ」
「えっ」
あの見るからに真面目そうな、医者の勉強しかやってこなかったようなイメージの父がパチンコ!?
「パチンコで大負けして、デートに遅れてきてね。もう、どこへも連れて行くお金がないって言われた時は、目が点になったわよ。でも、結婚してからは、パタリとやめたけどね。だから、こう言ったの。貴方が出来ない分、私が思いっきりパチンコを楽しむからってね」
「そうなんだ」
気が付くともうパチンコ屋に着いていた。
母からどういう風な手順でやるのか教わり、母が選んだパチンコ台の隣に座り、スロットを始めた。
当たり前なのだが、なかなか揃わない。
手持ちのお金も沢山はもってきてないので、多分負けて帰るのだろう。
しばらくすると、隣の母のスロット台が、騒がしい音を立て始めた。
数字が二つ揃っていて、リーチ状態になっていた。
しかし、あんなに騒ぎ立てたわりに、三つ目が揃わなかった。
「そう簡単にいかないよ」
とパチンコ玉を補充する母は、玄人っぽく言う。
その後も母の方は、小さい当たりは出たが、僕は全く当たらなかった。
僕は面白くなくなり、母に、先に帰ると言うと、
「じゃあ、夕飯になりそうなもの、何か買って帰って」
と言われ、五千円札を渡された。
僕はパチンコ屋を出て、大きな道を通って、近くのスーパーまで歩いた。
だだっ広い、駐車場を抜けて、スーパーの入り口に積まれた籠をひょいと持って、店内を歩く。
同じように買い物をしてる、おばさん二人の笑い声が聞こえ、僕は、ぎょっとした。
一瞬、僕の事を笑ってないかと思ったが、おばさんの視線は全然こちらを向いていないので、関係なさそうだ。
僕は、大学に入学した頃から、あるグループにいじめられていて、五月まで一ヶ月休学していた。
六月に入り、憂鬱だったが、大学に行き始めると、いじめる方法が変わって、無視が始まった。
ネットにも悪口を書かれ、僕はもう休みたくてたまらなかった。
だが、死にたいと思った事もあったが、何故だかそれを実行しようとすると、決まった人が話しかけてくる。
例えば、歩道橋で、ここから飛び降りたら死ねるかなと思うと、
「石原君」
と、同じクラスの青井玲奈が話しかけてくるという感じなのだ。
僕は不思議でしょうがなくて、現れた本人に聞いてみた。
「石原君が死にそうな場面が頭の中に流れ込んできて、気が付いたら、そこにいるの」
「そんなのあり得るの?」
と聞くと、
「信じてくれないならいいよ」
と青井さんは苦笑いする。

青井さんは男子学生から、かわいいと評判の女子学生だったので、こうやって、二人で会えるのは楽しいが、死にたいと思う時限定なのは、何だか戸惑ってしまう。
僕は、死にたいと思うことをなるべくやめることにした。
会ってる所を見られて、いじめが酷くなる事を恐れていてのことだ。
いじめも、最悪死にたいと極度に思っても、青井さんが現れると思ったら、なんとか絶えられるようになった。
そのうち、いじめていた連中は僕に飽きたのだろう、ネットでの悪口も、無視も減ってきた。

惣菜コーナーで、見繕ったおかずを、籠に放り込み、会計をした。
このスーパーの横は、カフェになっていて、スーパーで買ったパンを食べたり出来る。
ふと、そのカフェが硝子越しに見えた。すると、青井さんが座っているではないか。青井さんと向かい合っている男性も見えたが、黒い服を着ている後ろ姿しか見えず、ぼくは会計の間やきもきした気持ちだった。
青井さんの表情はどこか硬いものがあり、何だかそれが気になった。
「二千五百六十円です」
という、店員の声で我に返り、財布から母のお金を取り出し、払った。

その日はそのまま、家に帰った。
母さんはもう帰っていて、
「俊哉、これ見て!すごいでしょ?」
と、豪華な賞品を見せてきた。
「はいはい、すごいね」
夜遅く帰ってきた父さんは、僕がパチンコをしたことと豪華な景品に驚いて、どうだったと、興奮気味に僕に話しかけてきたので、すごく、ウザかった。

次の日は雨が降っていた。
大学まではいつも自動車に乗って行く。
そんなに遠方にあるわけじゃないけど、公共交通機関を使うとかなり不便なので、そうしている。
教室に入り、周りを見ると、青井さんの姿が見えたが、何かとても深刻そうな顔をしていて、僕に気付くと、まるで泣きそうな顔をしてこちらを見て、視線をそらした。
何があったのだろうと思ったが、ここで聞けるような勇気はなかった。
席に着くと、隣の席の人がしゃべっているのが聞こえる。
「青井さん、失恋でもしたのかな?」
「青井さん振る男って誰だろうね」
僕は昨日のカフェにいた男を思い出した。あの時の青井さんの表情からして、あの男が原因なのだろう。
講義が終わった後、教室から出ると、目の前に黒い服に身を包んだ背の高い男性がぬっと出てきて、
「石原俊哉君だね?」
「はい」
と怪訝そうに僕が言うと、
「私に付いてきてほしい」
と言い出すので、
「どこに行くんですか?」
「そりゃ、あの世だよ」
冗談にもほどがある。僕は相手にしない方がいいと思い、黙って去ろうとすると、左手を掴まれた。
「私は死に神だ。君には拒否する権限はない」
「やめて!」
青井さんの声が聞こえた。
「黙れ、生き神。こいつが死ぬのは避けられぬことなのだ」
「その人は印のある人なのって、何回言ったら分かるの?」
「私には見えない」
「そんなことないわ」
「とにかく連れて行く」
腕を引っ張られると、カァーン!という金属の音がした。
見ると、パチンコの玉が、一メートルぐらいの高さぐらいに有り得ないくらい弾んでいた。
「何だと?これは…」
「貴方の見込み違いよ。分かったら去って」
「くっ」
死に神は僕の手を離し、悔しそうな表情をして去って行った。
これだけのことがあったのに、周りを歩く人達は、別におかしくも思っていない感じだった。
「石原君が死にそうな場面に遭遇するたび、生きたいと思っているのが伝わってきて、これは死に神が手を出せない、生きるための印を持っていると思っていたの。見つかって良かった」
青井さんは相変わらず弾んでいるパチンコ玉を掴み、僕に渡してきた。
「青井さんは神様なの?」
「生身の体で生まれてきた神だけど、人間の中で暮らしてきたから、ほとんど人間みたいなものね」
「あのさ、自殺を思いとどまらせてくれて、ありがとう」
青井さんは微笑んだ。
「あのね、石原君は印を手に入れたから、今日あった事や、私が石原君に関わった事は、お互い忘れてしまうんだ」
「えっ」
「私も多分神々の世界に呼び戻されると思うわ。だから、お別れね」
「青井さんありがとう」
「いいのよ」
そこから、記憶がどんどん消されている感覚が自分でも分かるほど、頭がずきずきした。
それからどうやって、家に帰ったか忘れてしまった。

夏休みに入り、僕は大学の図書館に涼みに来た。
本をテーブルに置き、座って読んでいると、向かいに、誰か座ってきた。ふと視線を上げると、同じ年頃の綺麗な女の人だった。
僕は、衝動的に声をかけそうになった。知らない人なのに。
「あの」
「あの」
僕らは言葉を重ねて、必死に思い出そうと努力しているようだった。
「どこかで会ってませんか」
二回目に話す言葉も同じで、僕らは笑い合った。